蛤を心臓肥大と診断す 大里 卓司 |
ハマグリの身がぷっくりとして美味しそうなさまを、作者独特のユーモアで
「心臓肥大」と表現したのだろう。 年を経た大きいハマグリを「心臓肥大、良し」若くて小さいのを「健康はバツ」と取り分けている作者が見える。ユーモア
大賞をあげたい俳句。
蝉時雨火葬の時の過ぎゆけり 伊藤 梢 |
ごおっという火の音と蝉時雨が重なる。あの激しい鳴き声のなかにいると、逆にしんと静かな孤独感におそわれる。火葬の時間の故人の人生が凝縮されたような
真空状態になったような不思議な時間が抑えて表現されている。 この句の読者はそれぞれの大切な人を見送ったときをしみじみと思い出すだろう。
季語との間に情感がある。
かなぶんぶん熱気球に乗る破目になり 今岡 昭栄 |
熱気球に乗ったのはかなぶんぶんなのか、作者なのか。季語の「かなぶんぶん」という措辞が巧みで下五の「破目」とよい感じに
相俟って作者自身のとまどいをユーモラスに表現している。俳諧味のある作品。
今生は水抜けられずあめんぼう 大村 玉兎 |
あめんぼは居を移るときは飛ぶこともあるが、基本的には水の上で一生を終える。水中を自由に泳ぐこともできない。よく見れば肢は水に
絡めとられているようにも思える。 アメンボも人もみな、何かから抜けられない宿命をもっているのかもしれない。味読してゆくにつれて深みの増す俳句である。

俳句:清水 清美
道一本違えてしまい栗の花 高橋 綾子 |
栗の花の匂いは強烈だ。白い穂のような雄花がでろんと伸びた地味な花なのだが、
その自己主張の強い匂いにはまいってしまう。 考えごとをしていて作者は道を間違え、栗の花に教えられている。
確かに栗の花には、人の間違いをただす強さがありそうだ。
青葉風とらえてみれば鉋屑 伊藤 希眸 |
青葉風の正体は鉋屑だというのだ。実際はみずみずしい青葉のときに
風とともに鉋屑が飛んできたのだろう。トンカチトンカチという音が天から聞こえてくる。。。表現の妙である。
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