No.107
2008.06 秀作鑑賞



同人誌「白燕」419号

馬場 民代







釈迦の胸ふくらんでいる冬かぼちゃ   伊藤  翠

座五の「冬かぼちゃ」によって当句は絶妙の諧謔を生む。 高潔なる釈迦の肉感、体温が伝わってくるようで如何にも近しく、親しみ深い。意外な視座から生れた句は当然ながら異彩を放つ。



















真冬日の街は左を向いている     工藤 克己

「真冬日の街」と、わざわざ限定されているのは、あるいは真冬日以外は右向きだという 裏返しに本意があるやも知れぬ。









バリウムをのむ水仙の頸いくつ    河村まさあき

嚥下困難なバリウムを口に含むときの人の気持ちや表情が、ナルシストという花言葉をもつスマートで 上品な水仙との対比で導きだされる気がしてくる。









  
機関車の正面迫る眠る山    和田 悟朗

「機関車の正面迫る」に対し、「眠る山」という強大なもの同士の(動と静)の相対構図。この景が放つ緊迫感に、戦争の影を感じるのは私の偏見だろうか。




















俳句:和田 悟朗



松過ぎて地球の形思い出す    島 彩可

「松過ぎ」という古典的で特異なことばから、唐突に「地球の形」という硬質な 太陽とつながことばへの展開が固有。 いるけれど、上下措辞の間にはミステリアスな「間」が生じ、読者の感興をそそられる。







 
人寒うして難題を解きほぐす     中島ふゆみ

「人寒うして」とは、難題を解く人自身の状態なのか、 あるいは見守る側が寒くなるような解きほぐし方なのか、興味深い。








 








書:後谷 芳琴