釈迦の胸ふくらんでいる冬かぼちゃ 伊藤 翠 |
座五の「冬かぼちゃ」によって当句は絶妙の諧謔を生む。
高潔なる釈迦の肉感、体温が伝わってくるようで如何にも近しく、親しみ深い。意外な視座から生れた句は当然ながら異彩を放つ。
真冬日の街は左を向いている 工藤 克己 |
「真冬日の街」と、わざわざ限定されているのは、あるいは真冬日以外は右向きだという
裏返しに本意があるやも知れぬ。
バリウムをのむ水仙の頸いくつ 河村まさあき |
嚥下困難なバリウムを口に含むときの人の気持ちや表情が、ナルシストという花言葉をもつスマートで
上品な水仙との対比で導きだされる気がしてくる。
機関車の正面迫る眠る山 和田 悟朗 |
「機関車の正面迫る」に対し、「眠る山」という強大なもの同士の(動と静)の相対構図。この景が放つ緊迫感に、戦争の影を感じるのは私の偏見だろうか。

俳句:和田 悟朗
松過ぎて地球の形思い出す 島 彩可 |
「松過ぎ」という古典的で特異なことばから、唐突に「地球の形」という硬質な
太陽とつながことばへの展開が固有。
いるけれど、上下措辞の間にはミステリアスな「間」が生じ、読者の感興をそそられる。
人寒うして難題を解きほぐす 中島ふゆみ |
「人寒うして」とは、難題を解く人自身の状態なのか、
あるいは見守る側が寒くなるような解きほぐし方なのか、興味深い。
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