No.103
2008.02 秀作鑑賞



同人誌「白燕」417号

山口 木浦木







台風の尻尾に吹かれ時事マンガ   林 宣子

気象衛星から台風をみると確かに尻尾のようなものが ある。この句の面白いところは台風に吹かれるのではなく、その尻尾に吹かれると表現した点だ。
犬が尻尾を振ると周囲に 風が生まれるなあと苦笑いした。その面白さと時事マンガがマッチする。
















こぼれ萩母の背中をみた様な     前田 清子

こぼれ萩なので萩の花が散っている。その風情から母の背中が想像されたのだ。 子は親の背中をみて育つという。
背中とはその人の素の部分だ。萩の花のイメージから作者の母親のイメージも連想できる。 また「〜た様な」で終わる表現がユニークだ。「ごとし」などとは違う新しい響きがある。






青年の口笛を聴く冬のプール    山中 康子

屋外の冬のプールは水が張ってない。水のないプールはそれのあるプールよりも音を反響しやすいのではないか。近くで青年が 口笛を吹いている。それをプールが聴いているような感じがするのだろう。夏のプールでは響きが出てこない。青年と冬の対比が魅力。







  
扇風機座敷童子のごと隅に    内山 思考

鳥取県境港市の水木しげるロードに行ったときに座敷童子の像をみたような気がする。扇風機が童子のように部屋の片隅に。扇風機の 夏は怪談の夏でもあり、取り合わせがいい。




















浜木綿や探りていたる旅鞄    紙谷 香須子

私の住む宮崎県の県花はハマユウである。渥美清主演の「男はつらいよ」 シリーズの撮影が宮崎県で一度あった。「寅次郎の青春」というタイトルだったと思う。
渥美は俳句をたしなんでいたようで、彼の句碑が 日南市に残っている。そのような背景もあってか、この句から映画の寅さんを想像してしまった。 寅さんには旅の鞄がつきものだ。海岸に寝そべった彼が鞄のなかを探している光景がふと浮かぶ。







 

ひまわりはうしろの空を率いたり     赤松  勝

ひまわりは向日性の植物。常に花を太陽に向けている。この句はひまわりが 第一「うしろの空」を率いているという。
ひまわりが日輪に向って花を回転させる際に、バックの景色を引き連れているように見えるのだろう。






 








書:後谷 芳琴