一本の蕨を摘むやあと無数 和田 悟朗 |
一本の蕨を目にし摘んでみると、そこかしこと次々に目に入ってくる。蕨摘みという実景ながら
その比喩するものは奥深く、ひとつを知ることで目覚める探究心と知識、学問の無限性を示す。
青胡桃そろそろ謀議つきるころ 河村 まさあき |
数人で集まって犯罪の計画や方法を相談することを法律用語で
謀議をいう。共同謀議など。まだ熟さない青い胡桃は葉陰に隠れるようにして見える。その存在かたちのイメージ。
蟇鳴いて人という文字歩きだす 工藤 克己 |
歩き出すのは人ではなく、人という文字という設定の面白さ。人は人の形のゆえに人と書くが、人の字の形のゆえに人というのかも。
象形文字の不思議に蟇の鳴く闇を配した。
退屈に耐えて大きな蓮の花 高橋 修宏 |
白蓮、紅蓮と美しく開く大輪の花は、夜明けにひらき昼前には閉じる。その見事な美しい姿は、まさに長い退屈に耐え、一時に開放された
カタルシスさえ感じるものだ。

俳句:佐々木 隆治
梅雨の蝶おしゃれなバケツさげてくる 近 三津子 |
とある晴れ間を待っていたように蝶がやってくる。大小も色彩もそれぞれである。
中七、下五の児童画のような配材は読者をメルヘンの世界へと誘い、作者の内奥の青春性をも感じさせる。
空梅雨の小さな鈴を鳴らしけり 赤松 勝 |
梅雨というのに雨がほとんどない年がある。異常気象だが、そのために農家は
田植えが出来ずやがて他の経済にも悪影響が出るやも。他人に言うまでには到らない、ふとした小さな不安感の表現かー。
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