No.101
2007.12 秀作鑑賞



同人誌「白燕」415号

中島 玄一郎







一本の蕨を摘むやあと無数    和田 悟朗

一本の蕨を目にし摘んでみると、そこかしこと次々に目に入ってくる。蕨摘みという実景ながら その比喩するものは奥深く、ひとつを知ることで目覚める探究心と知識、学問の無限性を示す。
















青胡桃そろそろ謀議つきるころ    河村 まさあき

数人で集まって犯罪の計画や方法を相談することを法律用語で 謀議をいう。共同謀議など。まだ熟さない青い胡桃は葉陰に隠れるようにして見える。その存在かたちのイメージ。






蟇鳴いて人という文字歩きだす    工藤 克己

歩き出すのは人ではなく、人という文字という設定の面白さ。人は人の形のゆえに人と書くが、人の字の形のゆえに人というのかも。 象形文字の不思議に蟇の鳴く闇を配した。







  
退屈に耐えて大きな蓮の花    高橋 修宏

白蓮、紅蓮と美しく開く大輪の花は、夜明けにひらき昼前には閉じる。その見事な美しい姿は、まさに長い退屈に耐え、一時に開放された カタルシスさえ感じるものだ。
















俳句:佐々木 隆治



梅雨の蝶おしゃれなバケツさげてくる   近 三津子

とある晴れ間を待っていたように蝶がやってくる。大小も色彩もそれぞれである。 中七、下五の児童画のような配材は読者をメルヘンの世界へと誘い、作者の内奥の青春性をも感じさせる。







 

空梅雨の小さな鈴を鳴らしけり   赤松  勝

梅雨というのに雨がほとんどない年がある。異常気象だが、そのために農家は 田植えが出来ずやがて他の経済にも悪影響が出るやも。他人に言うまでには到らない、ふとした小さな不安感の表現かー。





 








書:後谷 芳琴